本研究は腎臓でのErkの機能を明らかにすることを目的として、Erk1/2ダブルノックアウトマウスの作製を行い、恒常時、嚢胞腎および急性腎不全においてのErkの機能解析を行う計画である。 現在までにErk1 nullマウスおよびErk2 conditional knockoutマウスを作製し、その交配を進めている。さらに、Erk2遺伝子を欠失させるためのKsp-CRE transgenicマウスも既に作製し、前述のマウスたちと交配中である。 Erkの発現は出生時には尿細管上皮細胞で高発現が認められるが、成長と共に低下することを明らかにした。また、嚢胞腎形成時の異常増殖している尿細管上皮や腎動脈結紮で起こる尿細管壊死後の再生尿細管上皮で強いErkの発現が認められた。これらのことから、尿細管上皮細胞の増殖にはErkの発現が必要であることが予想された。しかしながら、これらのマウスはErk1のみ、あるいはErk2のみの単独のノックアウトマウスでは腎臓には全く変異は認められなかった。また、単独ノックアウトマウスでの腎動脈結紮後の再生も正常マウスと差がないことがわかった。以上のことから、尿細管上皮細胞の増殖にはErk1/2が協調的に機能していることがわかった。 以上のことより、Erk1/2が尿細管上皮細胞の増殖に協調的に関与していることを明らかにした。今後は、ダブルノックアウトマウスの解析を介して、Erkが尿細管上皮細胞の増殖にどのように機能しているか、他の増殖シグナルとの関連を明らかにする予定である。さらに、タモキシフェン誘導型のCre transgenicマウスも作製中であり、前述したマウスと交配することにより、胎生期からだけでなく、成体でのErk1/2ダブルノックアウトマウスも作製する予定である。
|