研究課題
本研究計画は、新たに同定した尿酸トランスポーターURATv1の細胞内の極性発現機構の解明、腎臓での発現部位の同定、血中尿酸値調節機構の解明を目的として研究を行った。このURATv1は以前からスプライスバリアントが存在することが報告されている。この2つのスプライスバリアントは、開始コドンの位置が異なることによって作られるN末端が短い512アミノ酸(URATv1-Sとする)またはN末端が長い540アミノ酸(URATv1-Lとする)の2種類のURATv1である。URATv1-SとURATv1-Lとの間で異なっているアミノ酸配列を認識する抗体を作製し、免疫蛍光染色によって解析した結果、URATv1-Sは腎皮質集合管の管腔側に、URATv1-Lは腎近位尿細管の血管側に発現が見られた。極性発現機構を解析するために、N末端から数残基ずつを欠失させた変異体を作製し、MDCK細胞に発現させてその細胞内極性輸送に関わるアミノ酸配列部位の同定を行った。その結果、URATv1-SのN末端領域には明らかなターゲッティングシグナルが存在しなかったが、URATv1-LのN末端領域のアミノ酸31残基にシグナルが存在することが分かった。また、これまで言われているようなdi-Leucineモチーフは極性発現に重要ではなかった。血中尿酸値の調節に関して検討するために、管腔側のURAT1と血管側のURATv1-Lの過剰発現マウスを解析した。その結果、URATv1-L過剰発現マウスの方が尿酸再吸収が促進したことによる尿中尿酸排泄の低下がみられ、管腔側のURAT1よりも血管側のURATv1-Lの方が高尿酸血症発症に対する寄与が高いことが示唆された。
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