研究1:腎生検腎組織のメサンギウム基質領域の定量化 当院で腎生検を施行された慢性進行性腎疾患を(具体的には糖尿病性腎症およびIgA腎症を中心に)対象とし、腎生検組織をパラフィン包埋、薄切しPAS染色をおこない糸球体内のメサンギウム基質領域拡大の程度を自動画像解析装置(WINROOF)を用いて定量化した。この方法を用いることによって、正常腎組織に比べ、特に糖尿病性腎症腎組織において基質の拡大が明らかになった。解析データを定量化したため、より客観的に腎組織の形態変化を評価することができた。 研究2:光学顕微鏡レベルでの免疫組織染色法 抗α3β1抗体を用いて各症例の腎組織に免疫染色をおこない糸球体基底膜と糸球体上皮細胞間におけるα3β1蛋白の発現および局在を観察した。さらに糸球体上皮細胞の細胞マーカーである抗podocin抗体、抗Z0-1抗体、抗CD2-AP抗体を用い、上皮細胞スリット領域における各種蛋白の発現の差異を比較検討をしたところ、正常腎組織などに比べて糖尿病性腎症の糸球体内上皮細胞では抗podocin抗体、抗Z0-1抗体、抗CD2-AP抗体の陽性所見は減弱しており、特に基底膜に沿って陽性所見が存在する、いわゆるリニアパターンが断絶したような染色パターンになっており、糖尿病性腎症では糸球体上皮細胞が脱落もしくは障害されていることが光学顕微鏡レベルで確認された。 今後は、研究1で得られたメサンギウム基質の増加の程度の結果と研究2で得られた抗podocin抗体、抗Z0-1抗体、抗CD2-AP抗体の陽性所見の減少率および抗α3β1抗体陽性所見との相関や蛋白尿などの臨床データなどとの相関など、上皮細胞減少との関連についてさらに統計学的手法を用いて検討してゆくことに研究を実施してゆくこととなった。
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