腎生検腎組織のメサンギウム基質領域の定量化および光学顕微鏡レベルでの免疫組織染色法による蛋白発現変化における検討として、当院で腎生検を実施した糖尿病性腎症腎組織を用い、糸球体内のメサンギウム基質領域拡大の自動画像解析装置における定量化の解析データを、先天性ネフローゼ症候群の責任遺伝子(NPHS2)の遺伝子産物であるpodocinに対する特異抗体および抗ZO-1抗体、抗CD2-AP抗体を用い、上皮細胞スリット領域における各種蛋白の発現の定量化データおよび蛋白尿や腎機能などの臨床データなどとの相関などについて統計学的に検討した。抗podocin抗体陽性面積率と一日尿蛋白排泄量およびクレアチニンクリアランスとの相関を検討したところ、一日尿蛋白排泄量とは負の相関関係(r=-0.774、p<0.05)を認め、さらにクレアチニンクリアランスとは正の相関関係(r=0.695、p<0.05)と統計学的有意に糸球体内の抗podocin抗体陽性面積率と相関が認められたことから、スリット膜関連蛋白の発現変化と、一日尿蛋白排泄量および腎機能は密接に関連していることが確認された。次に、メサンギウム基質領域拡大の程度と抗podocin抗体陽性面積率についての検討では、メサンギウム基質領域拡大の程度弱いながらも負の相関関係が認められ、結節性病変や糸球体硬化に至る過程にある糸球体でのスリット膜関連蛋白の発現変化は糸球体病変の進行と密接に関連していることが実際のヒトの腎組織で確認された。同様に抗CD2-AP抗体なども同じような傾向がみとめられ、今後は腎組織内での糸球体上皮細胞数や尿中に排泄されるポドサイトの数や程度と、これらスリット膜関連蛋白の発現変化、特に基底膜とポドサイトの細胞質との接着に関するインテグリンなどの研究が糸球体上皮細胞減少のメカニズムを解明する上で改めて重要であると考えられた。
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