多発性硬化症患者(視神経脊髄炎を含む)20例、健常対照10例の末梢血よりFicoll比重遠心法にて末梢血単核球(PBMC)を分離し、そこから磁気ビーズ細胞ソーティングシステム(MACS)を用いてCD19陽性細胞を抽出した。CD19陽性細胞表面上のIgG、IgM、IgD、CD5、CD27、CD38、CD38、CD72、CD80、CD86、CD267(TACI)、CD268(BAFF-R)、CD180などの抗原分子発現の陽性頻度や発現強度をフローサイトメトリー(FACSCalibur)を用いて解析した。視神経脊髄炎において、CD27強陽性、CD38強陽性、CD180陰性のプラズマブラストの割合が高い傾向にあったが、多発性硬化症、健常対照と有意差はなかった。 また、CD19細胞を96穴細胞培養プレート上に撒き、CO2インキュベーター内で無血清培地(X-Vivo[○!R])を用いて培養し、IL-6、IL-10、IL-15、IL-21、BAFFなどのサイトカインやCpG-ODNなどのToll様受容体リガンドのリコンビナントタンパクで刺激を行った。7日間培養後の生存率、サブタイプの変化、分化をFACSCaliburによるフローサイトメトリー法にて解析したところ、IL-6、IL-15、IL-10、BAFFの組み合わせによる刺激でプラズマブラストへの分化が誘導され、IgGの分泌が促進された。培養上清中に増加したIgGが認識する抗原を免疫組織科学的手法にて探索したところ、視神経脊髄炎の患者由来のB細胞が分泌したIgGがHEK293細胞上に強制発現させたアクアポリン4と反応した。このことから、視神経脊髄炎の患者末梢血中のB細胞が、視神経脊髄炎患者血清や髄液中で増加しているサイトカイン刺激によって自己抗体(抗アクアポリン4抗体)を産生しうることを証明した。さらに、培養液中に免疫抑制剤を添加することで各種免疫抑制剤の自己抗体産生抑制効果を解析したところ、副腎皮質ステロイドで有意な変化がなかったにもかかわらず、アザチオプリンおよびミコフェノール酸の添加により強い抑制効果が認められた。これらの免疫抑制剤による臨床的な効果が期待された。
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