<アストロサイトの疾患活動性マーカー> NMOは、病理学的にはアストロサイトの傷害が関連するアストロサイトパチーであることは判明したが、これまで臨床的に評価することはできなかった。我々は、髄液中のアストロサイト関連淡白GFAPを測定することにより、NMOでは多発性硬化症と比較して有意に上昇し、感度・特異度ともに90%以上という有用な診断マーカーとなりうることを示した。また、髄液中GFAP濃度は、NMO患者の臨床的重症度や予後とも正の相関を示すことから、臨床的に有用なマーカーであることを示した。また、中枢特異的な疾患と考えられている中で、先行してミオパチーを来たす例があることを報告し、AQP4抗体によって起こる病態の理解に幅広く貢献した。 <In vivoやIn vitroモデルによる視神経脊髄炎の病態解析> NMO病巣においては、AQP4およびGFAPは、病変の早期から慢性期にかけて染色性が低下もしくは消失していたが、髄鞘は早期病変においては比較的保たれていた。一方、多発性硬化症(MS)においては、AQP4、GFAPともに脱髄病変部でむしろ発現は亢進しており、明らかにNMOとMSの病理学的特徴は相反するパターンであった。この結果NMOの免疫病態としては、早期からアストロサイトが障害を受けるのに対して、脱髄は二次的に生じている可能性が示唆された。患者血清を用いたIn vivo及びIn Vitroモデルを作成し、NMOはMSとは異なり、アストロサイトの障害を起因として生じる疾患である事が示唆した。In vivoでは、患者血清より抽出した免疫グロブリンがラット脳脊髄においてAQP4の脱落や脱髄を生じることを示し、その中でアストロサイトの変性は脱髄より先んじて生じ、二次的に脱髄を起こすことを示した。またIn vitroではAQP4抗体が直接的にアストロサイトの細胞膜上のAQP4を変性させて細胞内に取り込ませることを、リアルタイムにビデオで撮影することに世界で初めて成功し、その病態を明かにした。
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