本研究は、プロテオーム解析の手法を用いて、脱髄型ギラン・バレー症候群(GBS)における自己免疫の標的分子を同定し、病態の解明とそれに基づく新規治療法の開発を目的とした。 これまでの知見から、脱髄型GBSの標的分子は末梢神経ミエリンの構成蛋白ではなく、Schwann細胞外層表面に発現する蛋白であると予想されるため、Schwannomaの細胞株から蛋白を抽出し、そこから標的分子を探索した。 まず、この抽出蛋白を一次元のSDS-PAGEで展開し、血清中IgGを一次抗体としたウエスタン・ブロット法を行い、脱髄型GBS患者の血清中IgGと抗原抗体反応するバンドを検索した。その際、一度に複数の血清を評価することができるスクリーナブロッターを使用し、脱髄型GBSと正常対照をそれぞれ8例ずつ評価した。疾患の血清と反応したバンドを計13本認め、そのバンドをトリプシンでゲル内消化し、質量分析計(LTQ)で蛋白の同定を行い、13本のバンドから359個の蛋白を同定した。一次元の泳動では抗原の分離が十分でないため、たくさんの蛋白が同定されたと考えられた。 このことを踏まえ、次に、蛋白の分離能に優れた、2次元電気泳動法を用いて抽出蛋白を展開した。疾患5症例の検討で、血清中のIgGが認識するスポットを計78個認めた。この78個のスポットに対応する蛋白を、質量分析計で解析し、全部で431個の蛋白を同定した。 標的分子はSchwann細胞外表面の蛋白との予想されることから、これらの蛋白のうち、局在が細胞表面であるものを文献的に検討し、3つの蛋白を標的分子の候補として選択した。今後は、これらの蛋白に対する自己抗体の存在を多検体で検証し、また病態機序における役割について組織学的にも検討を加える。
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