研究概要 |
本研究は、プロテオーム解析の手法を用いて、脱髄型ギラン・バレー症候群における自己免疫の標的分子を同定し、病態の解明とそれに基づく新規治療法の開発を目的とした,これまでの知見から、脱髄型ギラン・バレー症候群の標的分子は末梢神経ミエリンの構成蛋白質ではなく、Schwann細胞外層表面に発現する蛋白質であると予想されるため、Schwannomaの細胞株から蛋白質を抽出し、そこから標的分子を探索した。 蛋白の分離能に優れた、2次元電気泳動法を用いて抽出蛋白質を展開し、血清中IgGを一次抗体としたウエスタン・ブロット法を行い、脱髄型ギラン・バレー症候群患者の血清中IgGと抗原抗体反応するスポットを検索した。疾患5症例の検討で、血清中のIgGが認識するスポットを計78個認めた。この78個のスポットに対応する蛋白質を、質量分析計で解析し、全部で431個の蛋白質を同定した。標的分子はSchwann細胞外表面の蛋白質との予想されることから、これらの蛋白質のうち、局在が細胞表面であるものを文献的に検討し、3つの蛋白質を標的分子の候補として選択した。 3つの標的分子候補の合成蛋白質を用い、これらをSDS-PAGEで展開して、血清中IgGを一次抗体としたウエスタン・ブロット法を行い、これらの蛋白質に対する抗体の存在を確認した。その結果、探索に用いた5症例中に、3つの合成蛋白質それぞれに対しての抗体を持っている症例の存在を認めた。 本研究でこれら3つの蛋白質が、脱髄型ギラン・バレー症候群の標的分子蛋白質である可能性が示唆された。
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