慢性疼痛は日常生活の支障となる疼痛であり患者のquality of lifeを著しく障害する。末梢神経疾患を原因とする疼痛の発現には、軸索再生に伴うNaチャネルの過剰発現による興奮性増大が関与する。コンピューター制御軸索機能検査法は軸索イオンチャネル機能を非侵襲的かつリアルタイムに評価できる唯一の手法である。本研究は、軸索機能検査法を神経原性慢性疼痛患者の末梢感覚神経に応用し、軸索興奮性増大の病態への関与を症例ごとに定量的に評価する系を確立し、病態機序に基づいた治療法の選択と、治療効果の客観的評価法を確立することを目的とする。本年度は、糖尿病性末梢神経障害患者81名において、軸索機能検査を行い、器質的変化の程度と軸索Na電流増大及び疼痛の程度が関係することを示した。また、ADLの障害になる強い疼痛を有する患者において軸索Na電流を亢進し、Naチャネル阻害薬の投与により、Na電流の低下と疼痛の改善が得られることを示し、薬理効果の客観的な評価を行う系を確立した。以上の結果について論文として国際誌に公表した。
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