【研究背景と目的】ポリグルタミン病に共通する病因である伸長ポリグルタミン鎖について、H21年度研究で、ポリグルタミン鎖の立体構造を検討し、重合体形成が細胞傷害性獲得の起点となることを示した。本年度(H22年度)は、重合形成をしたポリグルタミン鎖がもたらす細胞傷害機序の検討を目的とした。ポリグルタミン鎖の細胞膜への局在性を示し、細胞膜において膜の脆弱性亢進もしくはイオンコンダクタンスの異常をきたすという仮説を立て、これを検証した。 【結果と考察】重合形成するポリグルタミン鎖(部分DRPLA蛋白Q56)を一過性発現したHEK293T細胞およびDRPLA-Q129 transgenic mouse brainの膜分画(超遠心法にて分画化)において、ポリグルタミン鎖重合体が蓄積していることを確認した(Semi-Denaturing Detergent-Agarose Gel Electrophoresis)。つづいて、部分DRPLA蛋白(Q129)をHEK293T細胞へ一過性発現させた後、細胞膜透過型蛍光指示試薬:fluo-4 AM (Molecular Probes)を細胞外添加(終濃度5μM)し、細胞内Ca2+濃度を検討した。ポリグルタミン鎖(Q129)発現細胞群とポリグルタミン鎖非発現細胞群の二群間において、細胞内Ca2+濃度には有意な差違を認められなかった。 【研究の意義・重要性】新たな知見として、細胞膜におけるポリグルタミン鎖重合体の局在を示した。しかしながら、その重合体局在が及ぼす病態として、仮説として挙げた細胞膜のイオンコンダクタンス(Ca2+)については、明らかな異常を認めなかった。細胞膜における病態として、脆弱性(浸透圧負荷)の検討や、glutamate刺激下でのイオンコンダクタンスについて追加検討を行う予定である。
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