研究概要 |
平成21年度の研究実績概要で報告した多巣性運動ニューロパチー1例,抗MAG抗体陽性IgM-MGUSニューロパチー3例に加えて,平成22年度では新たにCIDP1例,抗MAG抗体陽性IgM-MGUSニューロパチー1例,シェーグレン症候群に伴うニューロパチー1例が追加された.いずれも名古屋大学倫理委員会の審査および承認を得たうえでrituximab投与を行い,いずれも悪性リンパ腫に準じたプロトコール(375mg/体表m^2、週1回点滴静注、計4回)で投与した.評価項目は臨床所見,末梢神経伝導検査,感覚閾値定量検査(CASE IV),血清学的所見を収集した.多巣性運動ニューロパチーの1例は,rituximab投与前はγグロブリン静注療法(IVIg)によく反応するものの,4週毎のIVIgが必須であった.本治療後からはIVIgの投与間隔を6~7週まで延長することができたが,投与後7ヶ月頃より再び4週毎のIVIgを必要とした.CIDPは,本治療によりCD20陽性細胞の消失を確認できたものの,各評価項目に明らかな改善はみられなかった.今後さらなる症例の蓄積が必要である.シェーグレン症候群に伴うニューロパチーは初回投与からおよそ3ヶ月で各評価項目を収集しつつある段階であるが,現時点での治療効果は良好である、液性免疫の関与が示唆される抗MAG抗体陽性IgM-MGUSニューロパチーは,4例中3例でいずれかの評価項目で改善がみられた.徒手筋力は2例で改善し,3例で四肢末梢の自覚的なしびれ軽減と範囲の縮小がみられた.また,modified Rankin Scaleは2例で改善,1例は不変,残りの1例は1段階悪化した.血清IgM値は全体で低下がみられ,末梢神経伝導検査では,正中神経MCVの緩やかな改善とCMAPの改善がみられた.CMAPの改善は特に有効であった症例で顕著であった.全7症例への投与で副作用は全くみられなかった.
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