ヒトiPS細胞から分化したドーパミンニューロンにAgtrl1(アンギオテンシン受容体様タンパク1)やIL1R1(インターロイキン1受容体1)などの表面抗原が発現していることを本研究では確認した。しかし、ヒトES細胞群からの誘導と異なり、得られたドーパミンニューロンは全細胞数のうち3-5%程度しかなく、表面抗原を用いての分取が困難な状態であった。そのため、分化効率を上げるべく、Shh(ソニックヘッジホッグ)やFgf(線維芽細胞成長因子)8などの誘導因子の添加タイミングなどを検討することとした。濃度の変更より、胚様体から神経幹細胞培養を始めるときに使用することが有効であることが分かった。それにより7-8%程度までの上昇が見られた。 一方で、得られたドーパミンニューロンの機能について検討した。神経毒であるMPP+の添加によりドーパミンニューロンが減少するのだが、Agtrl1やIL1R1のリガンドであるApelinやIL-1βを投与したドーパミンニューロンは、このMPP+の刺激による減少が抑制されることが確認できた。 これらの知見を用いてパーキンソン病患者より得られたiPS細胞についてもドーパミンニューロンへ分化させることができたが、APelinやIL-1βを用いるとMPP+に対する耐性が獲得できた。今後は表面抗原を用いて、ドーパミンニューロンを分取し、6ヒドロシキドーパミンにより片側性にパーキンソニズムを来すマウスモデルに移植し、機能を解析する予定である。
|