家族性パーキンソン病の原因遺伝子から同定されたGIGYF2の分子生物学的解析を行なうことにより、GIGYF2の基本的な機能の解析と、パーキンソン病との関連を調査した。既存の報告から、GIGYF2は少なくともインスリンやIGFなどを含めた細胞内シグナル伝達の制御と関与していると考えられている。インスリン/IGFシグナルは代謝系疾患に加えて、加齢性変化やヒトの長寿との関連が知られており、多くの生命現象にとって重要である。まず、我々はGIGYF2の抗体の作成とGIGYF2が強発現する細胞系の樹立を行なった。我々の作成したGIGYF2抗体は、GIGYF2を強発現した細胞系において、ウエスタンブロット法と免疫染色法の両解析法において、タンパク特異的な検出が可能であった。またマウスにおいて、GIGYF2は主に膵臓や精巣に加えて、脳内に有意に発現しており、主に大脳皮質、海馬の錐体細胞、歯状回の穎粒細胞、小脳のパーキンジャ細胞、嗅球などで強い発現を示した。細胞内においてはRab4が局在するリサイクリングエンドソームの膜状に発現していた。このGIGYF2を発現することによって、エンドソームの巨大化がおこり、tGFt受容体の局在の変化が認められた。これらの結果は、GIGYF2は主にインスリン/IGFを含めた受容体の膜輸送を変化させることにより、シグナル伝達に変化を与えるタンパク質であることが想定された。このように、GIGYF2の基本的な発現様式と、細胞内の機能についての治験を得ることができた。今後はこの明らかになったGIGYF2の機能がどのような影響を与えるのかを調べ、疾患との関連についても調査する。
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