自律神経系を介して脳が統御する糖・エネルギー代謝調節機構の解明

2009 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 21790859
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 山田 哲也 東北大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (90400374)
• キーワード: 肥満症 / エネルギー代謝 / 自律神経系 / 視床下部 / 肝臓 / 求心性神経経路 / 臓器間相互作用

研究概要

本研究課題では、末梢臓器、特に肝臓における代謝の変化が自律神経を介した個体の代謝調節に及ぼす影響を検討することを目的としている。従来、我々は肝臓の代謝状態を代表する分子に着目して、臓器間相互作用を解析してきた。例えば、肝でのエネルギー蓄積過剰の状態を代表する遺伝子発現変化の一つであるPPARγに着目した解析では、迷走神経求心路を介して脳に伝達され、交感神経を活性化することで基礎代謝を亢進させるという機序を解明した。これは、過栄養摂取に対応してエネルギー消費を増やすという新たなエネルギー代謝恒常性維持機構の存在を発見したものであり、その機序に自律神経ネットワークが重要な役割を果たしていることを示した。今回は同様に肝臓のエネルギー代謝、特に解糖系の律速酵素であるグルコキナーゼ(GK)に着目して、PPARγとの相同差異を検討した。GKは高脂肪食負荷により、肝臓での発現がPPARγに比し早期に亢進していることを我々のモデルにおいても確認した。そこで、GKをアデノウイルスベクターを用いて肝臓に後天的に導入し、末梢臓器生じる変化を解析したところ、PPARγで認められた褐色脂肪組織での代謝の亢進と相反する結果が得られた。次に視床下部のニューロンの活性化をc-fosのmRNA発現をメルクマールに、レーザーマイクロダイセクション法で神経核特異的に採取したサンプルを用いて検討したが、著明な変化は認められなかった。以前にPPARγで得られた結果とは、異なる表現型であり肥満形成時に肝臓から発信される神経シグナルの多様性を支持すると思われる。

研究成果

• [雑誌論文] Characterization of a novel murine preadipocyte line, AP-18, isolated from subcutaneous tissue : analysis of adipocyte-related gene expressions (2010)
  • 著者名/発表者名: Chen C, Takahashi K, Yoshida A, Takizawa Y, Lee Y, Nakui M, Doi H, Takebayashi Y, Fukumoto M, Yamada T, Katagiri H, Oka Y, Satoh J.
  • 雑誌名: Cell Biol Int. 34(3) ページ: 293-299
  • 査読あり
• [雑誌論文] Angiopoietin-like Protein 2 Promotes Chronic Adipose Tissue Inflammation and Obesity-Related Systemic Insulin Resistance (2009)
  • 著者名/発表者名: Tabata M, Kadomatsu T, Fukuhara S, Miyata K, Ito Y, Endo M, Urano T, Zhu HJ, Tsukano H, Tazume H, Kaikita K, Miyashita K, Iwawaki T, Shimabukuro M, Sakaguchi K, Ito T, Nakagata N, Yamada T, Katagiri H, Kasuga M, Ando Y, Ogawa H, Mochizuki N, Itoh H, Oike Y.
  • 雑誌名: Cell Metab. 10(3) ページ: 178-188
  • 査読あり
• [雑誌論文] Peginterferon(PEG-IFN)plus ribavirin combination therapy, but neither interferon nor PGE-IFN alone, induced type 1 diabetes in a patient with chronic hepatitis C (2009)
  • 著者名/発表者名: Ogihara T, Katagiri H, Yamada T, Kudo H, Imai J, Ishigaki Y, Hinokio Y, Yamagiwa Y, Ueno Y, Shimosegawa T, Oka Y.
  • 雑誌名: Intern Med. 48(16) ページ: 1387-1390
  • 査読あり
• [雑誌論文] Eradication of insulin resistance (2009)
  • 著者名/発表者名: Imai J, Yamada T(co-first auther), Saito T, Ishigaki Y, Hinokio Y, Oka Y, Katagiri H.
  • 雑誌名: Lancet. 374(9685) ページ: 264
  • 査読あり
• [雑誌論文] Obesity alters circadian expressions of molecular clock genes in the brainstem (2009)
  • 著者名/発表者名: Kaneko K, Yamada T(co-first author), Tsukita S, Takahashi K, Ishigaki Y, Oka Y, Katagiri H.
  • 雑誌名: Brain Res. 1263:58-68 ページ: 58-64
  • 査読あり
• [雑誌論文] メタボリックシンドロームと自律神経系 (2009)
  • 著者名/発表者名: 山田哲也, 片桐秀樹
  • 雑誌名: Clinical Neuroscience 27(12) ページ: 1332-1333
  • 査読あり
• [雑誌論文] インスリン作用を介さない高血糖治療の可能性～臓器間相互作用を標的として～ (2009)
  • 著者名/発表者名: 山田哲也, 片桐秀樹
  • 雑誌名: Mebio(特集:2型糖尿病治療薬:薬剤選択のパラダイムシフトはあるのか) 26(8) ページ: 109-117
  • 査読あり
• [雑誌論文] 臓器間代謝情報ネットワークからみたエネルギー代謝調節の分子機構を探る分子消化器病(特集:メタボリックシンドロームから消化器疾患に迫る) (2009)
  • 著者名/発表者名: 山田哲也
  • 雑誌名: 分子消化器病 6(1) ページ: 7-14
  • 査読あり
• [学会発表] Obesity affects circadian expressions of molecular clock genes in the brainstem nucleus of the solitary tract (2009)
  • 著者名/発表者名: Yamada T, Kaneko K, Oka Y, Katagiri H.
  • 学会等名: 36th Congress of the International Union of Physiological Sciences
  • 発表場所: Kyoto
  • 年月日: 20090727-20090801