平成21年度に作成した膵特異的FoxO1ノックインマウスが膵臓以外にも視床下部で強く恒常活性型FoxO1を発現していることを確認した。そこで22年度は膵臓と視床下部の両方に着目してマウスの解析を行った。まず、ノックインマウスは16週齢以降に有意に体重が増加した。摂食量も16週以降に有意に増加し、摂食促進神経ペプチドであるAgrpの発現量が視床下部で増加していた。また、呼吸代謝測定システムを用いて調査した所、ノックインマウスで基礎代謝の亢進が確認された。それを裏付ける結果として、白色脂肪、褐色脂肪、骨格筋においてミトコンドリア関連遺伝子PGC1aとUCP1の発現量が増加していた。一方、糖負荷試験により耐糖能の軽度の低下と、インスリン負荷試験によりインスリン抵抗性が確認された。しかしながら、組織学的解析により、ノックインマウスのβ細胞量はむしろ増加しており、単離ラ氏島におけるグルコース応答性のインスリン分泌能が低下していた。また、ラ氏島におけるインスリン含量とPdx1、MafA、NeuroDの発現レベルが低下していた。従ってノックインマウスではインスリン合成の低下から分泌が減少し、耐糖能が悪化するも、全身のインスリン抵抗性に対するβ細胞の代償性肥大は保たれており、その結果としてマウスの耐糖能の悪化は軽度に留まると考えられた。今回作製した視床下部と膵臓特異的FoxO1ノックインマウスは肥満と耐糖能障害を併発するマウスであり、ヒトのメタボリック症候群の良い病態モデルとなると考えられる。今後も詳細にこれらのマウスを分子レベルで解析する予定である。
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