研究課題
若手研究(B)
2型糖尿病は末梢臓器におけるインスリン抵抗性に膵β細胞障害が合わさって発症する。しかしながら、中枢性(視床下部)のエネルギー制御破綻も肥満のみならず、2型糖尿病の病態とも深く関わっている。我々は以前に視床下部と膵臓における転写因子FoxO1の異常が肥満と糖尿病の原因となることを報告してきたが、これらは視床下部と膵臓を別々に解析したものであった。そこで今回我々は、Rosa26-loxP-stop-loxP-FoxO1-3AマウスとPdx1-Creマウスを交配させることで、視床下部と膵臓で同時に恒常的活性型のFoxO1(FoxO1-3A)を発現するノックインマウス(HTP-FoxO1-3A)を作成し、解析を行った。これらのマウスでは、視床下部と膵臓でのみFoxO1-3Aの発現が認められた。HTP-FoxO1-3Aは摂食量の増加と基礎代謝の低下から、コントロール群に比べて有意に体重が増加した。活動量には有意な差は認められなかった。視床下部のAgrp発現量は増加しており、摂食量増加の原因と考えられた。また、褐色脂肪、及び白色脂肪組織でのUCP遺伝子群とPGC1αの発現量が減少しており、基礎代謝低下の原因と考えられた。一方、インスリン耐性試験にてインスリン抵抗性が認められ、さらに糖負荷試験において耐糖能が低下していた。単離ラ氏島におけるインスリン含量、並びにβ細胞におけるPdx1、MafA、NeuroDの発現量は低下していたが、β細胞の総量は増加していた。また、Ki67陽性β細胞の増加とp21やp27の発現量の減少が認められ、インスリン抵抗性に対する代償性のβ細胞増殖と考えられた。以上より、FoxO1は視床下部においては摂食量と末梢のエネルギー代謝を制御しており、膵臓においてはβ細胞の機能に重要と考えられた。HTP-FoxO1-3Aは肥満とβ細胞障害を伴ったメタボリック症候群の良いモデル動物である。
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Endocrinology 151
ページ: 2556-2566
http://www.imcr.gunma-u.ac.jp/lab/metsig/index.html