研究概要 |
1)Wtap+/-マウスの抗肥満、耐糖能改善のメカニズムの解明(H21年より継続) (a)Wtap+/-マウス由来の胎児線維芽細胞は、脂肪細胞への分化能が障害されていた。 (b)マクロファージ培養細胞株においてWtapをノックダウンすると、^3H標識したチミジンの取り込みが低下し、細胞増殖が抑制された。 (c)すなわちWtapの減少は、脂肪組織およびマクロファージにおいて、肥満に対して保護的に働くことを明らかにした。 (d)骨髄移植により骨髄特異的Wtap+/-マウスを作成し、マクロファージにおけるWtap減少の全身へ影響を検討したが、体重や糖代謝は対照と比較して大きな差を認めなかった。すなわちWtap減少による抗肥満作用は、主に脂肪細胞に由来する可能性が示唆された。 2)新規Wtap標的分子の同定 (a)Wtapは、血管内皮細胞においてはCyclin A2の3'未翻訳部分に結合することでその翻訳を調節すると報告されていたが、脂肪組織やマクロファージにおいてWtapの低下は、必ずしもCyclin A2の発現やタンパク量低下に繋がらなかった.すなわちWtap+/-マウスの抗肥満作用はCyclin A2以外の分子を介す事が想定された。 (b)WtapのCyclin A2以外の分子標的の候補として、酵母ツーハイブリッド法によるGATA転写因子と相互作用するタンパクのスクリーニングにおいてWtapが報告されていることに着目した。Wtap発現ベクターを作成し、Cos細胞においてGATA発現ベクターと共発現させ、免疫沈降法によりタンパク相互作用を検討したところ、GATA-3とWtapに結合が認められた。GATA-2,3は前駆脂肪細胞において、脂肪細胞分化の抑制因子の一つとして報告されているため、脂肪細胞におけるWtap+/-マウスの抗肥満の分子メカニズムはGATA転写因子を介す可能性が示唆された。
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