糖尿病は代表的な生活習慣病であり、日本における糖尿病患者は著しく増加している。2006年の国民健康・栄養調査で40歳以上の3人に1人が糖尿病または糖尿病予備軍である。肝臓における糖産生の増加は、糖尿病における高血糖と密接に関与しており、栄養状態やホルモン環境の変化に対応してどのような機構で肝糖代謝が調節されているかを解明することは糖尿病への治療戦略の構築へと結びついていくのではないかと考えられる。本研究では、絶食・摂食のようなエネルギー変動により肝糖代謝関連因子の発現が糖尿病発症時にはどのように変化しているのか検討を行い以下の知見を得た。2型糖尿病モデルの肥満・インスリン抵抗性マウスの肝臓では、絶食・摂食時いずれの状況下において(1)血糖値の上昇に関与する成長ホルモンによって分泌されるインスリン様成長因子(IGF-1)発現が低下していることを見出した。(2)IGF-1の働きを制御するIGF-1結合タンパク質(IGFBP-1)の発現が増強していることが明らかとなった。(3)ストレスホルモンであるグルココルチコイドの活性化に関わる11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11β-HSD1)の発現にも影響がみられた。以上から肝臓においてこれら因子が絶食・摂食時の血糖制御に機能し、糖尿病発症時での血糖変化に関与している可能性が示唆された。今後はこれら因子がどのように肝糖代謝調節に関連しているのかにっいて検討し、またこれら因子の発現制御機構にっいて解明していく必要がある。
|