我々は糖尿病が血管病変形成に及ぼす影響のメカニズムを解明する為に、高血糖及び血糖変動が血管平滑筋細胞増殖に及ぼす影響を検討した。 8週令のC57BL/6マウスより大動脈血管平滑筋細胞を初代培養した。Passage3~7において、(1)正常血糖群(ブドウ糖濃度5.5mmol/l)(2)高血糖群(ブドウ糖濃度20mmol/l)(3)血糖変動群(高血糖と正常血糖を2日毎に繰り返す)の3群を用いて10日間血管平滑筋細胞の増殖曲線を検討してみた。 細胞株を換え、計5回の検討を行ったが、高血糖群や血糖変動群が正常血糖群に比して有意な血管平滑筋細胞増殖の亢進を認めたのは1度のみで、高血糖及び血糖変動はin vitroの状態では直接的に血管平滑筋細胞増殖を促進しない可能性が示唆された。また、(1)~(3)の条件下で培養した血管平滑筋細胞をPDGFで刺激し、その下流のシグナルであるErk-MAPKやCREBリン酸化を検討したが、有意な差は認めなかった。また、(1)~(3)の条件下で培養した平滑筋細胞におけるPKC δの蛋白発量や活性化も検討したが、有意な差を認めなかった。 次年度で我々は、同様の目的の為にin vivoでマウスモデルを用いた検討を計画している。糖尿病・非糖尿病状態において血管障害モデルにおける新生内膜形成を検討する。またこの際、血糖変動に介入する抗糖尿病薬が新生内膜形成に及ぼす影響も追加して検討する予定である。
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