糖尿病の治療の目標の一つは大血管障害を抑制することである。今回我々は、GLP-1アナログであるExendin-4 (Ex-4)を用いてGLP-1作用が血管平滑筋細胞(SMC)に及ぼす作用を検討した。8週齢の雄C57BL/6マウスに持続皮下投与ポンプで高容量のEx-4 (24nmol/kg/day)を投与した上で10週齢時に左大腿動脈に血管障害術を施行し4週間後にNeointima formation評価した。両群で血糖・脂質・体重に差はないにも関わらず、Ex-4投与群では対照群に比し有意なNeointima formationの抑制を認めた。次に8週齢の雄C57BL/6マウスから初代培養されたマウスSMCにおいて、GLP-1受容体が膵β細胞同様に発現していることをウエスタンブロット法にて確認した。SMCを無血清培地で12時間培養した後、Ex-4の用量を変えて刺激を行ったがいずれもBrdU取り込みには有意な上昇を認めず、Ex-4がSMC増殖に直接的に促進しない事が示唆された。そこでSMCをEx-4で12時間前処置した後に、Platelet-Derived Growth Factor (PDGF)誘導性のBrdU取り込みを検討したところ、Ex-4群では対照群に比べ有意にBrdU取り込みを抑制し(P=0.0063)、Ex-4が競合的に既知であるPDGF誘導性のSMC増殖を抑制する事が見出された。しかし、SMCにおけるPDGF誘導性の下流シグナルであるAkt-Erk-MAPKのリン酸化及びcell cycleはEx-4前処置よっても有意な変化を認めず、未知の経路の関与が示唆された。GLP-1アナログ・Ex-4が間接的にSMC増殖抑制作用を有し、血管狭窄病変や動脈硬化病変の進行を抑制する可能性が示唆された。
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