昨年度までに、すでに世界で初めて樹立済みであったグレリン分泌細胞株MGN3-1を用いて、本年度は、特に、ペプチドホルモン、神経伝達物質が、グレリン分泌、グレリン遺伝子発現に与える影響について、検討を行った。今回、検討を行ったペプチドホルモンのうち、オキシトシンおよびバゾプレッシンがMGN3-1細胞よりのグレリン分泌を優位に刺激することを見いだした。MGN3-1細胞では、バゾプレッシン受容体は発現しておらず、オキシトシン受容体のみが発現していること、また、オキシトシン受容体アンタゴニストによりバゾプレッシンのグレリン分泌刺激作用は減弱することから、バソプレッシンの作用は、交差反応であると考えられ、オキシトシンがグレリン分泌刺激作用を持つと考えられた。神経伝達物質では、エピネフリンおよびドーパミンがグレリン分泌を優位に刺激することを見いだした。また、受容体特異的アゴニスト、アンタゴニストを用いた検討により、エピネフリンの作用は、アドレナリンβ1受容体を介すること、ドーパミンの作用はD1受容体を介することが明らかとなった。グレリン遺伝子発現に関しては、オキシトシン、エピネフリン、ドーパミンのいずれも明かな作用は認められず、これらの因子は、グレリンの産生では無く、分泌を主に刺激すると考えられた。今回の検討により、グレリン分泌を直接刺激する因子3つが明らかとなり、グレリンのエネルギー代謝調節等における生理的役割を理解する上で、非常に有用な知見であると考えられた。
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