既に我々は、肝臓特異的レプチン過剰発現トランスジェニックマウス(LepTg)の解析を通じて、レプチンは摂食抑制や体重減少をもたらすだけではなく、インスリン感受性亢進を伴った糖脂質代謝亢進作用を有することを報告してきた。これらの知見に基づき、疾患モデルマウスを用いた検討を行い、脂肪萎縮性糖尿病、インスリン分泌低下型糖尿病、軽度肥満2型糖尿病におけるレプチンの糖尿病治療薬としての有用性を示してきた。しかしながら、メタボリックシンドロームで見られる肥満状態では「レプチン抵抗性」のために、期待されるレプチン作用は減弱しており、レプチン抵抗性の分子メカニズムの解明、レプチン抵抗性改善薬の開発が強く望まれてきた。近年、膵β細胞から分泌されるアミリンが、レプチンの体重減少作用を増強することが報告され注目されている。今年度は、レプチン抵抗性状態にある高脂肪食誘導肥満マウスを用いて、アミリン、レプチンの共投与が、摂食や体重だけではなく、糖脂質代謝に及ぼす作用についても詳細に検討し、レプチン抵抗性の分子メカニズムを解明し、メタボリックシンドロームにおける新たな治療薬の開発につなげることを目標とした。 野生型マウス(C57Bl/6J)を高脂肪食下で5週間飼育して得られた肥満マウス(DIOマウス)は、レプチン抵抗性を示した。このDIOマウスに、浸透圧ミニポンプを用いてアミリン・レプチンを持続皮下投与し、摂食量、体重、血中の糖脂質代謝パラメータ(血糖値、インスリン値、中性脂肪濃度等)、肝臓や骨格筋の脂質含量やAMPK活性に与える作用を詳細に評価した。その結果、アミリンは摂食や体重に対するレプチンの作用を増強するだけではなく、糖脂質代謝に対するレプチンの作用も増強することが明らかになった。この結果は、レプチン・アミリンが肥満2型糖尿病に対して治療薬になりうることを意味し、今後のメタボリックシンドロームの治療において重要な知見と考えられる。
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