脂肪細胞から分泌されるレプチンは、強力な摂食抑制やエネルギー消費亢進による体重減少をもたらすだけではなく、インスリン感受性亢進を伴った糖脂質代謝亢進作用を有することから、メタボリックシンドロームを包括的に治療する薬剤となる可能性がある。しかしながら、メタボリックシンドロームで見られる肥満状態では「レプチン抵抗性」のために、期待されるレプチン作用は減弱しており、レプチン抵抗性の分子メカニズムの解明、レプチン抵抗性改善薬の開発が強く望まれてきた。 平成21年度は、野生型マウス(C57Bl/6J)を高脂肪食下で5週間飼育して得られたレプチン抵抗性を有する肥満マウス(DIOマウス)を用いて、膵β細胞から分泌されるホルモンであるアミリンが、摂食や体重減少に対するレプチン抵抗性を改善するだけではなく、糖脂質代謝に対するレプチン抵抗性をも改善する可能性を示した。 平成22年度は、その糖脂質代謝改善メカニズムとして、骨格筋AMPK活性化が関与する可能性を示した。また上述のアミリンとは別に、レプチンシグナルを賦活化させる条件や薬剤を探索する目的で、肝臓でレプチンを過剰発現するトランスジェニックマウスを高脂肪食下で飼育して得られた肥満マウス(LepTg/HFD)を用いて、アミリン以外にレプチン作用を増強あるいはレプチン抵抗性を改善する可能性のある薬剤あるいは条件をin vivoのレベルでの探索を始めた。現在、アミリン以外にGlucagon-like peptide-1についても、摂食、体重調節、糖脂質代謝調節においてレプチンとの共作用が観察されており、その詳細な解析を行っている。 今回得られた結果は、レプチン・アミリンあるいはレプチン・GLP1が肥満2型糖尿病に対して有用な治療薬になりうることを意味し、今後のメタボリックシンドロームの治療において重要な知見と考えられる。
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