研究課題
グレリンプロモーターの下流にヒトDTR cDNAを結合したコンストラクトを作成し、グレリン分泌細胞にDTRを強制発現するGPDTR-Tg(Ghrelin Promoter/Diphtheria Toxin Receptor-Tg)マウスを作製した。このGPGTR-Tgマウスに、ジフテリアトキシン(DT)を投与すると、グレリン分泌細胞が破壊されることを、免疫組織学的解析によって確認した。また血中グレリン濃度は、50ng/kgx2回(day0,day2)のDT投与によって、day4には検出限界以下まで低下し(野生型(WT)マウスvs.GPDTR-Tgマウス 64.0±6.0fmol/ml vs.5.0>fmol/ml)、その分泌低下状態はday7まで持続した。このグレリン分泌低下マウスを用いて、グレリンの生理的役割、特に摂食調節に関する検討を行った。グレリン分泌低下マウスの1週間の平均摂食量は27.1±0.6gであり、WTマウス28.2±0.6gと比較して有意な差を認めなかった。また昼夜の摂餌パターンの解析では、WTマウスが日中に1日摂餌量の22.7%、夜間に77.3%を摂取したのに対し、グレリン分泌低下マウスは、日中に22.0%、夜間に78.0%を摂取しており、両者の間に有意な差は認めなかった。これに加えて、摂食調節に関与する遺伝子の発現検討や負荷時の摂食状況等の解析を行ったが、検討し得た限りにおいて、グレリン分泌低下マウスで目立った変化を指摘し得なかった。この結果からは、摂食行動は生物にとって重要な行動であるがゆえに、強力な摂食促進作用を有するホルモンであるグレリンが分泌低下した状況においても、速やかに代換経路によって摂食行動が維持されたのではないかと推測している。今後は、いかなる代換経路が働いているのか検討する必要がある。
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