単一の癌遺伝子では、甲状腺濾胞上皮細胞をトランスフォームするには十分ではないと考えられている。二次的な追加の遺伝子変異、もしくはエピジェネティックな変化が癌化には必須であると考えられる。本研究は、甲状腺濾胞細胞の癌化に、BRAF変異にさらに追加で必要な変異を同定しようと計画されたものである。ドキシサイクリンによってBRAFV600Eを誘導できるラット正常甲状腺由来PCCL3細胞を用いて実験を行った。この細胞は、BRAFV600E変異だけではトランスフォームせず、TSH依存性も変化しない事が実験的に報告されている。我々はレトロウイルスを用いたゲノムワイド変異導入法を用いて、さらなる遺伝子変異を導入しようと試みた。シュードタイプ(VSV-G)の殻を持つレトロウイルスを293GPG/pDON-AI-EGFP細胞を用いて作製し、20MOIで上記のBRAFV600Eを誘導できるPCCL3細胞に感染させた。遺伝子導入された細胞は、ドキシサイクリンを含む3H培地(インスリン、アポトランスフェリン、ハイドロコルチゾン、TSHを含まない)で培養し、BRAFV600E発現下でTSH非依存性となるクローンの単離を試みた。最終的に、152個のクローンを単離する事が出来た。次のステップとして、PCRベースのSplinkerette増幅法を用い、レトロウイルスがインサートされた染色体上の位置を決定する予定である。
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