研究概要 |
単一の癌遺伝子では、甲状腺濾胞上皮細胞をトランスフォームするには十分ではないと考えられている。本研究は、甲状腺濾胞細胞をトランスフォームするために、癌遺伝子BRAFV600Eにさらに追加して必要な遺伝子異常を同定するために計画されたものである。ドキシサイクリンによってBRAFV600Eを誘導できるラット正常甲状腺由来PCCL3細胞は、よく分化した甲状腺濾胞細胞の特徴を保持しており、その増殖にはTSHを必要とする。我々はレトロウイルスによるゲノムワイド変異導入法を用い、ランダムな遺伝子変異導入によりTSH非依存性となるクローンの単離を行った。 合計38のTSH非依存性クローンを単離し、さらにその中で増殖の速い5クローンをその後のSplinkerette-PCR増殖法によるインサートの位置解析に使用した。PCR産物のシークエンス解析の結果、計400以上の異なったフラグメントが検出され、そこから96の候補遺伝子が同定された。また同時に、遺伝子発現解析マイクロアレイ(SurePrint G3 Rat 8x60K, Agilent)を用い、親株と単離されたクローンで発現の異なっている遺伝子を検索し、こちらからは35の候補遺伝子を同定した。これらSplinkerette-シークエンス法とマイクロアレイ法の解析結果を組み合わせ、最終的に9つの候補遺伝子を同定する事ができた。今後、これら候補遺伝子に対するノックダウン法や遺伝子導入法を用いた機能解析を継続していく予定である。
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