|
本研究では、中枢神経系による白色脂肪組織に対するエネルギー代謝調節機構を調べるため、中枢メラノコルチン受容体に着目して実験を行った。
マウスの側脳室内にメラノコルチン受容体アンタゴニストであるAgouti-related protein (AgRP)を投与すると、精巣上体の白色脂肪組織(EWAT)において脂肪酸合成酵素(FAS)および炎症性サイトカインであるIL-6とTNFαのmRNA発現が増加した。これに対して鼠径部の白色脂肪組織(IWAT)においては、FASの発現増加は見られたものの、炎症性サイトカインの発現上昇は、認められなかった。両群間において血糖値に差はなかった。一方、メラノコルチン受容体アコニストであるMTIIを側脳室内に投与しても、上記の遺伝子発現に変化はなかつた。
交感神経系の関与を調べるため、アドレナリンβ受容体遺伝子欠損(β-less)マウスを用いて検討を行った。β-lessマウスのEWATおよびIWATでは、野生型マウスと比ベてFAS、TNFαおよびIL-6の発現が増加していた。このようなβ-lessマウスの側脳室内にAgRPを投与すると、EWATにおけるTNFαとIL-6のmRNA発現かさらに上昇する傾向を示したが、IWATでは変化は見られなかった。また、野生型マウスで見られたAgRP投与によるFASの発現増加は、両WATとも見られなかった。
以上のことより、白色脂肪組織におけるFASおよび炎症性サイトカインの発現は、中枢メラノコルチン系により部位特異的な調節を受けていることが示唆される。β-lessマウスの結果から、FASは交感神経にによアドレナリン受容体作動性と考えられるが、炎症性サイトカインの発現調節は不明である。このメカニズムとその意義を解明することは、肥満や糖尿病の発症予防につながると考えられる。次年度において引さ続き研究を続行する予定である。
|
