研究課題
トランスフェリン受容体2(transferrin receptor2:TfR2)は、細胞内鉄取り込み分子であるトランスフェリン受容体1(transferrin receptor1:TfR1)と相同性を持つものの、その機能は単なる鉄取り込みではなく、生体内鉄代謝調節因子であるヘプシジンの発現調節への関与の可能性が注目されているが詳細は未だ明らかではない。研究者は体内の鉄の状態を反映するトランスフェリン(diferric transferrin:Tf-Fe_2)の濃度変化をTfR2やHFEが感知している可能性に特に着目し研究を進めた。本研究では、まず細胞膜表面に発現するisoformであるTfR2αを培養細胞に強制発現させ、トランスフェリンとの結合様式、さらには鉄の取り込み機能に関して、従来のTfR1との分子レベルでの差異を明らかにした。その後、TfR2や、TfR2と協調しながらヘプシジンの発現調節に関わる因子と目されるHFEに関して、各々その発現を増強させた細胞株や、逆に発現をknockdownした細胞株を作成するため、強制発現ベクターやsh-RNA発現ベクターを肝癌細胞株に遺伝子導入し、安定細胞株を樹立した。ただ、TfR2αおよびHFE発現に関してknockdownは非常に困難で、長期間高濃度のselectionを行っても50%発現低下程度にとどまった。また、研究者が開発したヘプシジンの3つのアイソフォームを同時に定量できる高感度測定系を利用して培養上清中のTf・Fe2濃度を変化させてヘプシジン発現変化も検討したが、当初の予想とは異なり、ヘプシジン発現に大きな差異は認めなかった。しかし、この点に関し、肝細胞以外の細胞が鉄センサーとして機能している可能性にも注目し、単球・マクロファージ系がその機能を担う可能性を見出し、鉄のセンサーは肝細胞だけではない可能性を明らかにしてきた(論文準備中)。さらに、非トランスフェリン結合鉄の高感度定量系も構築し、これを用いて培養上清中の非トランスフェリン結合鉄(non-transferrin-bound iron:NTBI)濃度を変化させてのヘプシジン発現への影響の検討も始め、現在も研究は継続推進中であるが、本研究によって既に数多くの成果を得られたと考えている。
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