骨髄異形成症候群(MDS)の高密度SNPアレイ解析により約30%の症例に観察されるコピー数の変化を伴わないLOH(aUPD)領域内には、標的候補である遺伝子変異が高頻度に存在する。そこで同領域内の標的遺伝子探索を行い、4番染色体長腕aUPD例においてTET2遺伝子変異が高頻度に生じており、同領域の標的遺伝子であることが明らかとなった。TET2変異はMDSおよび関連疾患の約30%の症例で認められ、MDSの病態に重要な役割を担っていると予想される。一方、SNPアレイの解析によっても、コピー数異常やUPDを有さない症例はMDSの20-30%存在し、ゲノム異常領域からのアプローチには限界がある。そこで近年、急速な技術革新が見られている次世代リシークエンサを活用したtarget-capture sequencingによるMDSにおける新規変異遺伝子の網羅的な探索を試み、20例のMDS症例の全エクソン解析により、約200個の腫瘍細胞特異的な変異が同定された。既知の標的遺伝子変異の他にも、多数の新規遺伝子変異が含まれた。複数の症例において共通して観察される遺伝子変異もあり、現在、それらの変異の多数例における頻度の解析を進めている。今後、本アプローチにより、治療標的となり得る分子が同定されることが期待される。
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