本年度は、昨年度からmicro RNA (miRNA)の解析に着手した、MLL-ENLとEstrogen Receptor α鎖の融合蛋白MLL-ENL-ERによってIL-3及びタモキシフェン存在下にマウスの造血前駆細胞を不死化した細胞株MERにおいて見出した、タモキシフェンの存在の有無で変動するmiRNAをadd backする実験系の構築を試みた。MERは浮遊系細胞であるため、リポフェクションによる遺伝子導入は困難であり、レトロウイルスベクターによる導入を行うため、まず、そのベクター作成を行った。MMLV系のpMXsベクターをSINベクターに改変したものをもとにして、shRNAと同様にして、micro RNA配列を発現する構造を念頭に、その発現カセットの導入及び最適化の検討を行った。その際、従来よく用いられている、pol III型のU6プロモーターなどでは、大過剰発現に伴う非生理的現象を引き起こす可能性があると考え、発現量の制約が出現する可能性があるものの、pol II型のU1プロモーターによる発現カセットを採用した。また、発現細胞の選択のため、SV40プロモーターによってGFPあるいはpuromycin耐性遺伝子を発現する配列も挿入した。しかし、その際、U1プロモーターをふくむ発現カセットとSV40プロモーターによる選択カセットの位置関係、向きなどによると考えられる複雑な相互抑制作用が出現したため、幾つかの組み合わせにおける最適化を行い、一定のmicro RNAの発現レベル上昇を来すベクター候補が得られつつある。一方、in vivoの病態における役割を詳細に検討するため、conditionalにMLL-ENLを発現するトランスジェニックマウスを作成し、このマウス自体の基礎的検討も行っている。
|