これまでに我々はマウス胚発牛渦程に出現するリンパ球系譜と骨髄球系譜の両方へ分化する最初期の多能性造血細胞の単離、解析を行ってきたが、本年度はこの最初期の多能性造血細胞が、胚発生過程において中胚葉細胞からどのような過程を経て発生してくるのかについて検討した。 方法としては、中胚葉由来細胞を特異的に蛍光標識できる胚性幹細胞を用い、試験管内分化系にて血液細胞へ分化を誘導することで、中胚葉から血液細胞へ至る分化過程の中間段階にあたる細胞をセルソーターで単離し培善することで、胚発生期の造血発生過程を解析した。 このなかで、我々は汎血球マーカーであるCD45を発現する以前の中胚葉細胞のうち、CD41^+AA4.1^+分画(DP細胞)とCD41^+AA4.1^-分画(CD41SP細胞)に造血活性があること見いだした。詳細な解析を行ったところ、DP細胞は我々が以前に車離した最初期の多能性造血細胞の直接の前駆細胞であり、成体型のリンパ球系譜と骨髄球系譜のみを形成した。一方、CD41SP細胞はより分化段階の未熟な細胞であり、DP細胞、多能性造血細胞の前駆細胞であるとともに、発生期に一過性に産生される胎仔型赤血球も効率よく形成した。CD41SP細胞は血管内皮細胞などの他の中胚葉系譜への分化能を持たず単一細胞レベルでも高い頻度で成体型多能性造血細胞と胎仔型赤血球を産生することから、成体型造血細胞と胎仔型赤血球の共通前駆細胞であり、胎仔、成体の全ての血液細胞系譜へ分化できる最も未熟な造血細胞と考えられた。 実際のマウス胚においても、CD41SP細胞とDP細胞は発生初期の卵黄嚢に多く存在し、一部は胚体に存在しており、分化能についても胚性幹細胞同様に確認できた。以上のことから、マウス胚発生過程において中胚葉細胞が血液細胞へ運命決定されていく過程で生じる分化段階の中間に位置する前駆細胞群を同定できたと考えている。
|