研究概要 |
我々は、患者の骨髄からt(12;13)(p13;q12)転座を同定し、この染色体相互転座からETS variant gene 6 (ETV6; TEL)とFMS-like tyrosine kinase 3 (FLT3)の融合遺伝子ETV6/FLT3を確認した。この染色体転座は、これまで一例の骨髄増殖性疾患で報告されているが、腫瘍化における役割についての詳細は解明されていない。融合遺伝子の全長をクローニングし、これをBa/F3や32D細胞に遺伝子導入するとFLT3のtyrosineが恒常的にリン酸化され、IL-3非依存性に生存することを確認した。さらに、レトロウイルスベクターを用いてマウスの骨髄細胞に遺伝子導入し、同系マウスに骨髄移植をおこなったところ、移植後早期に致死的な骨髄増殖性疾患を発症することも判明した。正常のFLT3はそのligandと結合してdimerを形成し活性化されるが、ETV6のhelix-loop-helix domain (HLH)のdeletion mutantやFLT3のkinese dead mutantを用いたマウス骨髄移植の解析では、この融合遺伝子ではHLHのoligomerizationとFLT3のtyrosine kinaseの活性化が腫瘍化に必須であった。さらに、急性骨髄性白血病でしばしばみられるFLT-ITD変異では,FLT3のチロシン残基の中でjuxtamenbrane domainのY589およびY591のリン酸化によるSTAT5の活性化が腫瘍化において重要と報告されているが、ETV6-FLT3においてはこのリン酸化は腫瘍化に必須ではなく、adaptor proteinであるGrb2の結合が重要であることが示唆された。
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