1.多発性骨髄腫前駆細胞分画の同定 多発性骨髄腫前駆細胞/幹細胞がCD19^+B細胞中に存在するのかCD19-CD38^<++>形質細胞中に存在するのかは未だ議論があり確定していなかった。我々は、、SCID-rabモデル(SCIDマウスの皮下に移植したウサギ骨の中にヒト骨髄腫細胞を移植するxenograft model)において、長期間骨髄腫クローンを増幅、維持する能力を持つ骨髄腫前駆細胞は、CD19-CD38^<++>形質細胞分画中に存在することを示した。また、SCID-rabモデルにおいて生着増殖する細胞は形質細胞のマーカーとされているCD138陽性の分画よりもむしろ、CD138陰性分画に濃縮されていた。一方、CD19+B細胞をNSGマウスなどの免疫不全マウスに移植することによる骨髄腫の再構築は我々が移植した10症例においては見られなかった。以上より、多発性骨髄腫前駆細胞は確かに形質細胞のマーカーであるCD138を持たない細胞分画に濃縮されるが、それらは、B細胞ではなく、CD38強陽性の形質細胞であることが示された。このことは、骨髄腫の完治のためには、まず骨髄腫形質細胞を完全に排除する方法を開発することが重要であることを示している。 2.多発性骨髄腫に対する抗体療法の新規標的抗原の同定 骨髄腫形質細胞を完全排除するための一つの方法として有望なものとして、モノクローナル抗体による抗体療法がある。我々は、多発性骨髄腫形質細胞全てに高発現し、造血幹/前駆細胞での発現が極めて低い抗原としてCD48を同定した。されに、新規抗CD48抗体を作製し、その中で、in vitro、in vivoともに強い抗骨髄腫効果を示す抗体を同定した。さらに、それは、正常造血幹/前駆細胞を傷害しないことも証明した。今後、実用化が期待される。
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