研究課題
Zinc finger protein 521(ZNF521)は、ヒトCD34陽性造血幹細胞に高発現しているが、血液細胞の分化に伴いその発現が低下する興味深し転写因子である。また、多くの急性骨髄性白血病細胞なおいても高発現していることが報告されており、造血幹細胞の腫瘍化こおける役割も注目に値する。このような背景のもと、われわれは現在この興味ある転写因子ZNF521の血球分化における働きを解析している。慢性骨髄性白血病急性転化由来細胞であるD562細胞と赤白血病由来細胞であるHEL細胞にZNF521のsiRNAを導入することにより、その発現を抑制し、細胞の機能的、形態学的変化を解肝した。その結果、ZNF521発現を抑制したクローンではコントロールと比較して、glycophorin Aやヘモグロビンなどの赤血球の分化を示す遺伝子ならびにタンパク質発現の著しい増加が認められた。以上の結果より、転写因子であるZNF521の発現を抑制することによって、多分化能を有する未熟造血細胞株が赤血球系に分化することを初めて明らかにした。さらに、ZNF521は赤血球分化に必須の転写因子であるGATA-1と直接結合し、GATA-1の機能を負に制御することによって造血幹細胞の分化を抑制することを明らかにした。このことは、ZNF521が造血幹細胞の幹細胞性("stemness")を維持するのに重要な分子であることを強く示唆している。さらに、ZNF521のマウスホモローグであるEvi3についてもsiRNAを作成し、これをマウスES細胞に導入し、Evi3をノックダウンした細胞を作成した。今後、機能的、形態学的変化を解析する計画である。さらに、Evi3ノックアウトマウスを現在作製中であり、マウス体内での造血機能に対する影響に関しても検討する計画である。
すべて 2009
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