研究概要 |
レンチウイルスベクターを用いたRNAiの手法で骨髄細胞のVinculinをノックダウンすると感染細胞由来の造血が認められないことから,Vinculinが造血幹細胞の生着・維持,もしくは分化に関与するという仮説を立て研究を開始した.Ly5.1(CD45.1)コンジェニックマウスよりc-kit陽性,Sca-1陽性,Lineage陰性(KSL)のマウス造血幹細胞を上記ベクターに感染させ,造血幹細胞移植を行うと末梢血球におけるGFP陽性率(感染細胞由来の造血)はコントロールやTalinに対するshRNA発現と比較すると明らかに低く,さらにCD45陽性細胞におけるLy5.1の割合も極めて少なかった.またVinculinの抑制によりKSL細胞の増殖,LTC-ICやCobblestone-lile area forming cellの頻度は減少した.一方,KSL細胞のCFU-C,CFU-G,CFU-GM等の分化に影響を及ぼさなかった.以上より,shRNA発現によるVinculin抑制が,造血幹細胞の生着・維持を低下させると考えられた(J Biol Chem 2010).さらにVinculinの血小板インテグリン活性化への機能を明らかにするためにChinese hamster ovary (CHO) cellにインテグリンαIIbβ3を発現させた細胞株を得て実験を行った.N末端のみ,またはclosed conformationを抑制するmutagenesisを起こしたmutant Vinculinの強発現ではαIIbβ3の活性化が認められた(BBRC 2010).以上より,VinculinによるαIIbβ3の活性化にはVinculinの構造変化,つまりclosed conformationからN末端が露出することが必要と考えられる.
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