T細胞性リンパ腫と診断された症例において、診断目的に採取したリンパ節からmRNAを抽出後、SMRT法(Clontech社)にて完全長cDNAを選択的に増幅した。さらに、レトロウイルスプラスミドに挿入しレトロウイルスライブラリーを構築した。ライブラリープラスミドをレトロウイルスパッケージング細胞に導入し、得られたレトロウイルスライブラリーを、マウス繊維芽細胞株3T3に感染させ、形質転換細胞から癌化能を有する複数の候補遺伝子を同定することができた。さらに、サイトカイン依存性マウスT細胞株CTLL-2(サイトカイン非依存性増殖細胞から自律増殖能をもたらす遺伝子を同定する)、ヒトT細胞性白血病細胞株Jurkat(抗癌剤耐性細胞から薬剤耐性関連遺伝子を同定する)にもレトロウイルスライブラリーを感染させスクリーニングを継続している。候補遺伝子については、骨髄キメラマウスの作成、siRNAによる遺伝子発現抑制等にてさらなる機能解析が進展すると考えられる。また、T細胞性リンパ腫73症例のゲノム構造異常および臨床情報との関連から、候補遺伝子発現メカニズムおよび長期予後への影響についても解明されると考えられる。本研究によりT細胞性リンパ腫の原因遺伝子を同定し、それに基づく新しい診断法および治療戦略を構築することが可能になると考えられる。
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