T細胞性リンパ腫と診断された症例のリンパ節からmRNAを抽出し、SMART法にて増幅してレトロウイルスライブラリーを作成した。標的細胞としてマウス繊維芽細胞株3T3にライブラリーを遺伝子導入し、形質転換細胞から癌化に関連する候補遺伝子をスクリーニングした。スクリーニングの結果、候補遺伝子としてRELB遺伝子が同定され、全長シークエンスにて同定されたRELBに64番目のアスパラギンをセリンに置換する点突然変異を認めた。変異RELBを3T3に遺伝子導入しても形質転換を認めなかったが、サイトカイン依存性骨髄系細胞に遺伝子導入するとサイトカイン非依存性の増殖を認めた。野生型RELBを遺伝子導入しても骨髄系細胞に形質転換を認めず、RELB遺伝子におけるN64S変異は活性型変異と考えられた。骨髄性腫瘍細胞株および患者検体の網羅的な遺伝子発現を解析した結果、RELB遺伝子の有意な発現増加はみられなかったが、同解析にてRCAN1遺伝子の高発現を認めた。Yeast two-hybrid screening法にてRCAN1蛋白は、癌抑制遺伝子HINT1、RINT1蛋白との相互作用が認められ、癌抑制遺伝子の機能を抑制することで癌化に関連している可能性が考えられた。RELBおよびRCAN1は造血器腫瘍の原因遺伝子である可能性があり、本研究はこれらの遺伝子異常を標的とする分子標的治療の開発に寄与すると考えられる。
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