【背景】これまでマウス造血幹細胞移植の系で間葉系幹細胞(MSC)共移植による造血幹細胞(HSC)の生着促進効果が報告されてきた。今回われわれは霊長類モデルを用いて骨髄内移植(iBMT)におけるMSC共移植の効果を検証した。 【方法】カニクイザル自家移植の系で実験を行った(n=3)。まず自家のHSC(CD34陽性細胞)とMSC(骨髄ストローマ細胞)を分離・回収した。HSCは2等分してそれぞれ別のレトロウイルスベクター(G1NaまたはLNL6)で標識した。前処置としてTBI施行またはブスルフェクス(BU)静注の上、同一個体内でヘミ骨髄内移植を施行した。すなわち右側(右上腕骨・右大腿骨)にはHSCとMSCの共移植、左側(左上腕骨・左大腿骨)にはHSCの単独移植をそれぞれ施行し、評価は中立の腸骨骨髄・末梢血のほか、四肢骨髄で行った。生着後、二つの標識を区別するPCRを施行し、両群の生着への貢献度を定量した。 【結果】1頭目は移植後day46に腸骨骨髄のコロニーPCRを施行した結果、共移植群由来のCFUが48%(22/46)、単独移植群由来のCFUが11%(5/46)と、共移植群で明らかに高かった(4.4倍)。2頭目は移植後day28以降、白血球数が2500-3000/μlへと回復し、その約2%が標識されており(移植細胞由来)、その大半が共移植群由来であった。3頭目も末梢血の大半が共移植群由来であった。また移植後day39の四肢骨髄のコロニーPCRを施行した結果、共移植群由来のCFUが明らかに多く(2頭目では6倍、3頭目では1.6倍)、2頭目・3頭目ともに反対側骨髄への遊走・生着が認められた。 【結語】カニクイザルの自家骨髄内移植の系で解析した結果、MSC共移植群で造血細胞の生着率が高まることが示された。この効果はMSCの骨芽細胞分化を経ていわゆるosteoblastic nicheが創出されたことに因ると推察される。
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