研究概要 |
前年度に引き続きMOZ及びMORFの機能解析、特にMORFの機能解析を中心に研究を行った。前年度の研究から成体まで生存可能なMORF欠損マウスを得ることが可能になったことから、骨髄中の造血幹細胞について特に長期の造血幹細胞維持機能について解析を行った。MORF欠損マウスでは骨髄細胞分画中の造血幹細胞が濃縮されたCD34陰性、c-Kit陽性、Sca-1陽性、分化マーカー陰性分画の細胞が野生型と比べて減少していた。さらに5-FU投与や加齢に伴い、MORF欠損マウスで造血幹細胞分画が顕著に減少していることが明らかとなった。これらの結果及び移植実験の結果からMORFは、長期の造血幹細胞の維持に重要な遺伝子であることが示唆された。またMORF欠損マウス造血幹細胞の機能不全の原因となりうる遺伝子について検討したが、MORF欠損マウスの造血幹細胞分画で発現量が減少している遺伝子を明らかにすることはできなかった。さらにMORFによる造血系細胞の機能制御機構を明らかにするために、MORFと結合する造血に関わる転写因子を探索した。その結果、MORFは今までに知られているAML1やPU.1のみならずGATA-1/2とも結合することが明らかとなった。GATA-1/2の転写に対する影響をレポーターアッセイで解析した。MORFは、GATA-1に依存した転写を協調的に活性化したが、GATA-2による転写は活性化しなかった。さらにGATA-1/2が関わることが知られている巨核球分化についてMORF欠損マウスを用いて解析をした結果、巨核球前駆細胞の割合が野生型と比較して低下していた。以上の結果から、MORFはAML1, PU.1, GATA-1/2といった造血に重要な転写因子との相互作用を介して、造血系細胞分化や自己複製に関わっていることが示唆された。
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