研究概要 |
多くの悪性リンパ腫において、NF-kBの制御異常は腫瘍形成のメカニズムとして重要視されている。一方で、NF-kBの制御異常を引き起こすゲノム異常については、十分には解明ざれていない。本研究の目的は、リンパ腫におけるNF-kB制御因子TNFAIP3/A20の異常を検索し、その異常によリ引き起こざれるリンパ腫形成の分子基盤を明らかにすることである。本年度の研究では、アレイCGH解析データから明らかにした、高頻度にA20のゲノム欠失を有する活性化B細胞型びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(ABC DLBCL)28例、マントル細胞リンパ腫(MCL)18例について、遺伝子変異およびプロモーター領域DNAメチル化の検討を行った。遺伝子変異はABCDLBCL53.5%,MCL16.6%に認められ、プロモーターメチル化はそれぞれ41%,37%に認められた。両アレルのA20不活化はABC DLBCL37%,MCL17%であり、これらのリンパ腫においてA20ががん抑制遺伝子として機能している可能性が示唆ざれた。A20の腫瘍化機構を明らかにするため、A20nullのDLBCL,MCL細胞株に対し、レンチウイルスを用いてA20遺伝子導入を行った。その結果A20導入によりこれらの細胞株ではNF-kB活性の抑制が見られ、アポトーシスが誘導された。さらにA20欠失による造腫瘍性について検討するため、EBウイルス不死化B細胞を用いてsiRNAでA20ノックダウンを行い、コロニーアッセイで増殖能を評価した。A20のノックダウンによってコロニー形成能の亢進が認められ、この効果はNF-kB阻害剤により抑制された。A20の欠失はNF-kBの脱制御を介して腫瘍化にかかわっていることが示され、ABC DLBCLやMCLにおける治療の標的としても有望と考えられた。
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