成人T細胞性白血病/リンパ腫(ATLL)の臨床分類には"急性型"と"リンパ腫型"がある。これらは典型的な症例ばかりではなく、両方の特徴を持つ中間的症例も多数存在する。現在の臨床分類ではこれらの症例すべてを"急性型"として扱うことになっている。しかし、その基盤的分子病態についてはこれまでまったく明らかにされてこなかった。 本研究の目的(1)は白血病とリンパ腫病変を両方持つような中間的ATLL症例に対してアレイCGH法を行い、ゲノム異常様式として"急性型"か"リンパ腫型"を明らかにすることである。平成21年度には白血病とリンパ腫病変を両方持つような中間的症例を10症例集積し、全例で末梢血病変とリンパ節病変のアレイCGHを施行した。これを既に蓄積済みのゲノム異常データ(アレイCGH:典型的リンパ腫型57例、典型的急性型16例)と比較した。現在時点での解析結果から、中間的症例の多くが典型的"リンパ腫型"に特徴的なゲノム異常様式を持つ可能性を見出している。ATLL中間的症例の中には複数の分子病態をもつ疾患群が混在しており、その一部には典型的なリンパ腫型と同一病態が含まれている可能性があることを意味していると考えている。平成22年度はさらに症例を加えて、この新しい知見が確かな事実であることを確認していく。 本研究の目的(2)は典型的"急性型"と中間的ATLL症例の発現解析を行い、比較検討することである。平成21年度には典型的"急性型"ATLL症例8症例と中間的ATLL症例4症例について、Agilent社の4x 44KオリゴDNAマイクロアレイを用いた遺伝子発現データを集積した。平成22年度はさらに症例を加え、目的(1)で見出しつつあるゲノム異常の知見と相関する遺伝子発現異常が見出されるのか、解析を行う。
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