研究概要 |
研究代表者が所属するグループにおいて膜型蛋白SHPS-1(別名SIRPα)遺伝子破壊(KO)マウスでは、自己免疫疾患の発症が著しく抑制されることを報告している。しかしながら、SHPS-1による自己免疫疾患発症の制御機構については未だ十分に明らかとはなっていない。そこで本研究では、SHPS-1ならびにそのリガンドである膜型蛋白CD47と形成される細胞間シグナル伝達系CD47-SHPS-1系による自己免疫疾患に対する制御機構について、SHPS-1を高度に発現している樹状細胞(以下、DC)を中心に詳細な解析を行った。DCのうち、SHPS-1はCD8^-DCに強く発現するが、SHPS-1KOマウスの脾臓やリンパ節などの2次リンパ組織ではCD8^-DC、中でも最大の分画であるCD8^-CD4^+DCが顕著に減少しており、その成因としてSHPS-1のシグナルがDCの生存を制御していることを見出した。さらにCD47KOマウスにおいてもCD8^-CD4^+DCが同様に減少しており、骨髄キメラマウスを用いた検討からDC上のSHPS-1と非血球細胞上(おそらくはストローマ細胞など)のCD47の相互作用がDCの恒常性維持に必須の役割を果たしていることを報告した(Saito Y, et al., Blood 2010)。さらにSHPS-1は皮膚DCの恒常性の制御に重要であること(Iwamura H, et al., Immunol. Lett. 2011)、腸管免疫応答やリーシュマニア原虫感染の制御に重要であることを報告した(Kanazawa Y, et al., Genes Cells 2010 ; Morimoto et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2010)。
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