研究概要 |
「滑膜細胞の脂肪分化誘導はRAの病態を改善する」というコンセプトの妥当性に関して、IL-11モデルとiPS誘導因子モデルを検証してきた。 1、 IL-11モデルの検証 (1)TGFβ-1によるIL-11の誘導および滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制 TNFα,IL-1β,IFNγと同様に、TGFβ-1が滑膜線維芽細胞の脂肪分化を抑制するが、さらにIL-11の著明な誘導をもたらすことが判明した。TGFβ-1が脂肪分化抑制効果は、IL-11を介す可能性が示唆された。 (2)IL-11は滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制効果を認めない。 リコンビナントIL-11は滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制効果を認めず、他細胞の報告とは異なった。 IL-11中和抗体処理しても、TGFβ-1による滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制は解除されなかった。 以上の検証により、滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制メカニズムとしてIL-11モデルは否定的と判断。 2、 iPS誘導因子モデルの検証 (1)滑膜組織での発現検討:iPS誘導因子(Oct3/4,Sox2,Kfl4)の中で、Kfl4の発現が確認された。 (2)培養滑膜細胞での発現検討:やはりKfl4の発現がウェスタンブロットで確認された。 (3)一方、Oct3/4,Sox2の蛋白質レベルでの発現は確認されなかった。 (4)サイトカイン刺激による発現誘導:Kfl4のIFNγ、TGFβ-1による発現制御の可能性が出てきている。 以上の検証により、滑膜線維芽細胞の脂肪分化抑制メカニズムとしてKlf4の関与が示唆される。 3、 今後の検証課題 (1)siRNAによるKfl4のノックダウンによる脂肪分化促進の可能性を検証 (2)Oct3/4,Sox2の強発現による脂肪分化抑制の検証 (3)TGFβ-1による脂肪分化抑制機序として、epithelial-mesenchymal transitionとの関連を探索する。
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