自己免疫疾患の中では珍しい常染色体劣性遺伝の単一遺伝子疾患であるAPECED(自己免疫性多腺性内分泌不全症-カンジダ症-外胚葉性ジストロフィー)の原因遺伝子として同定された自己免疫調節遺伝子AIREは、組織特異的遺伝子の胸腺における異所性発現を支配し、免疫学的寛容の成立に関与している。 以前作製した抗マウスAire抗体の活性が低かったため、新たに抗マウスAire家兎抗体(抗Aire-pAb)を作製した。抗原に用いた合成ペプチドは、機能ドメイン以外のペプチド配列(2カ所、マウスAireタンパクにおける126番目からの15残基と541番目からの12アミノ酸残基)を用いた。作製された抗Aire-pAbは、以前の抗体に比べ著しく高い特異性を示し、かつ10倍以上の高い抗体活性を示した。ウェスタンブロッティング法により検出されたバンドは、合成ペプチドによる吸収反応で消失した。この抗体を用いて、すでに樹立した胸腺上皮細胞由来Aire^+細胞株でendogenousに発現するAireタンパクの発現が確認された。Aireは核内に局在し、遺伝子発現を制御していると考えられることから、Aire^+細胞の核画分に対して抗Aire-pAbを用いた共免疫沈降を行った。Aire^+細胞の核画分から共沈降された蛋白質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動し、銀染色したところ25~450kDaの範囲に複数のバンドが検出された。これらの中にAireタンパクの標的タンパクあるいはAireタンパクと協調して働く重要なタンパクが含まれていると思われ、今後はその正体の解明を進める。
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