研究概要 |
平成21年度は、Jak3阻害薬のリンパ球に対する影響を検証する目的で、ヒト末梢血CD4陽性Tリンパ球を磁気ビーズ法にて分離し、Jak3阻害薬CP690,550存在下での細胞増殖への影響を[3H]thymidine取込で、サイトカイン分泌への影響を、ELISA法、Cytometric Beads Array法、細胞表面抗原をFlow Cytometryにて評価した。抗CD3抗体と抗CD28抗体(CD3+28)刺激により細胞増殖は誘導され、CP690,550により濃度依存性に強く抑制された。また、CD3+28刺激によりIFN-γとIL-17分泌が誘導され、CP690,550は濃度依存性にこれらの分泌抑制効果を示した。一方、BCR+sCD40L刺激したB細胞では、CP690,550は増殖能に影響を与えなかった。以上からCP690,550の主たる標的細胞はCD4+T細胞と考えられた。以上の知見を踏まえ、平成22年度は引き続きCP690,550のリンパ球に対する影響の解析を進めた。まず、IFN-γとIL-17についてmRNA発現をTaqman PCRにて検討したところ、CP690,550により何れも発現が抑制されていたことから、サイトカイン産生抑制の一機序として転写抑制の機序が考えられた。CP690,550によるアポトーシスの誘導はみられなかった。以上より、CP690,550によるサイトカイン産生抑制の一機序として転写抑制の機序が考えられた。また、SLE患者ではIFN-γ,IL-17の産生亢進が報告され、これらのサイトカインが病態形成に関与する可能性が示唆されており、CP690,550はSLEに対する治療法となりうる可能性が示唆された。
|