本研究ではヒトパルボウイルスB19(B19)感染後に関節リウマチ(RA)を発症した患者を経験したことから、サイトカイン産生により自己免疫異常がどのようにして起こるのか、その機序を明らかにすることを目的としている。そこでサイトカインのシグナルを制御するSOCS1分子に着目した。本年度は自己免疫疾患を自然発症するSOCS1欠損マウスを用いてその抑制性T細胞(Treg)の機能に関して研究を行った。T細胞特異的SOCS1欠損マウスは皮膚炎や関節炎、自己抗体の上昇など自己免疫疾患様の症状を示した。その末梢CD4T細胞はほとんどがメモリータイプであり自己抗原などで活性化されていることが示唆された。一方でTregの数は増加していた。Tregの機能を調べるためにCD4+CD25+Tregを単離し、試験管内でナイーブT細胞の増殖抑制機能を調べたが正常であった。次に個体レベルでTregの機能を調べた。Rag欠損マウスにナイーブT細胞とTregを同時に移入して腸炎の発症を抑制する系で調べたところ、野生型Tregは腸炎を抑制するのに対しSOCS1欠損Tregは腸炎発症を抑制できなかった。このメカニズムを調べるためにRag欠損マウスにTregのみを移入したところ、SOCS1欠損Tregはマスター遺伝子であるFoxp3を失いやすくインターフェロンγ(IFNγ)を高産生した。SOCS1欠損Tregでは恒常的にSTAT1のリン酸化が起こっており、SOCS1はSTAT1を抑制することでTregの機能維持に必須の役割を果たしていることが示唆された。
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