本研究ではヒトパルボウイルスB19(B19)感染後に関節リウマチ(RA)を発症した患者を経験したことから、サイトカイン産生やそのシグナルの異常によりどのようにして自己免疫異常が起こるのか分子レベルの機序を解明することを目的としている。現在抗炎症機能をもつ細胞としては抑制性T細胞(Treg)が中心的であると考えられている。TGFβやIL-10の供給源としてもTregは重要である。しかしサイトカインシグナルによるTregの発生、維持に関する制御機構はほとんど知られていない。そこで本年度は多くのサイトカインシグナルの制御因子であるSOCS1のTregにおける機能について解析を行った。まずSOCS1-floxマウスをFoxp3Creマウスと交配しTreg特異的SOCS1欠損マウスを作製したところ皮膚炎や肝炎などの自己免疫疾患様の症状を呈した。SOCS1のnTregにおける役割を解明するために、in vitro、in vivoでその抑制能を検討した。RAG2欠損マウスへのnaive T細胞とそれぞれのnTregの移入実験では、SOCS1欠損Foxp3陽性nTregを移入した方が腸炎の抑制効力が劣っていた。そこで、RAG2欠損マウスへそれぞれのnTregのみを移入して、nTregの運命を検討した。GFPでマーキングしたFoxp3陽性T細胞(>99% Foxp3陽性)を移入した所、4週後にWT nTregは約60%がFoxp3陽性を維持しているのに対して、SOCS1欠損nTregは40%までFoxp3陽性率が低下した。SOCS1欠損nTregを移入したRag欠損マウスではFoxp3陽性、陰性どちらの分画からもIFNγやIL-17の産生が認められた。これらの結果から、SOCS1がnTregにおいてFoxp3の安定性およびサイトカイン産生抑制に寄与することが明らかとなった。
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