本研究では、耐性機序に基づいた多剤耐性緑膿菌(MDRP)院内感染対策を実践し、さらに耐性化機序について検討した。MDRP感染対策としては、接触感染対策と抗菌薬適正使用の双方が重要である。MDRPは尿から検出されることが多く、接触感染対策強化としては蓄尿環境の改善を徹底した。また、抗菌薬適正使用の推進活動としてカルバペネム系抗菌薬は全数届出制とし、さらに長期投与者への介入を行った。その結果、カルバペネム系抗菌薬のAUDと長期投与者数、耐性緑膿菌検出数は有意に減少した(p=0.04、p=0.0092)。 一方、耐性機序の解明としては、緑膿菌が感性から2剤耐性、さらに多剤耐性となる機序について解明することを目的として、2008年1~12月に同一症例において2剤耐性緑膿菌(2PA)およびMDRPの双方が検出されている症例を抽出し、それらの症例から検出されたすべての緑膿菌をリストアップし、MICを測定、さらにAmpC型βラクタマーゼ;AmpC、メタロβラクタマーゼ;MBLの産生性を調査し、抗菌薬使用状況と耐性化の関連性について検討を加えた。さらに、すべての菌株についてPFGE法により同一性を調査し、MIC結果と比較検討した。その結果、上記期間に同一症例において2PAとMDRPのどちらも検出された症例は10例で、全緑膿菌検出株数は58株であった。MBLとAmpC検出率はそれぞれ24%と43%で、AmpCの検出にはセフェム系薬の使用が関与している可能性が示唆された。一方、薬剤感受性パターンは耐性株と感性株が時系列の中で前後して検出されていた。PFGE解析結果は17のクローンに分類されたが、同一検体より異なるクローンが検出されている場合や同一クローンでもMICが異なる場合がみられた。異なるクローンであってもコロニー形態は類似している場合があり、各検査で偶発的に感性株や耐性株を釣菌している可能性が考えられた。
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