IgA腎症(IgAN)は、糸球体メサンギウム領域にIgAが優位に沈着するメサンギウム増殖性腎炎である。IgA腎症の病因は腎既存細胞の応答性か、全身性の免疫反応や幹細胞レベルでの問題かは、長く討議されてきており、4半世紀を越えた病態解明を目指す研究が数多く続けられているが、未だ病因の解明には至っていない。我々は、IgANは上気道に起こったウイルス感染症のもと、ウイルスに対する自然免疫の反応と同時に獲得免疫反応が起こった結果、創りだされる病態ではないかと考えている。上気道に感染したウイルスは、自然免疫を誘導するToll like receptor 3 (TLR3)、TLR7、TLR9等に認識され、Plasmacytoid樹状細胞(DC)から大量のType I Interferon (Type I IFN)が産生される。TLR3はIFNβを、TLR7とTLR9はIFNαとIFNβ両方を分泌する。分泌されたType I IFNは、MonocyteをMyeioid DCに分化させ、このMyeloid DCは周囲の環境によって、Naive T細胞の分化の方向を決定する。CpG DNAやIL-40Lと協調した場合はTh1分化を惹起するが、IL-3の刺激がある場合は、Th2分化を促進する。そこで、ヒトIgAN生検組織を用いてサイトカインreal-time PCR法を行い、獲得免疫を司るTh1/Th2/Th17/Tregの分化パターンをサイトカイン発現で評価した。はっきりとした分化傾向を示すサイトカイン産生の結果は得られなかった。一方、自然免疫系では、TLR9の発現、IFNαの発現が著明であり、TNFαとIL-6の発現が他の増殖性糸球体腎炎に比較しても優位に増加していることが明らかとなった。今後は、このサイトカイン産生の程度と腎組織の重症度評価が関連しているかどうかなどの解析を続けていく予定である。
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