研究概要 |
IgA腎症(IgAN)は、我が国の原発性糸球体腎炎の約50%を占め、診断後20年以上の経過で、約40%が末期腎不全へ進行する疾患である。我々はIgANは、上気道に起こったウイルス感染症のもと、ウイルスに対する自然免疫の反応と同時に獲得免疫反応が起こった結果、創りだされる病態ではないかと考えている。実際にウイルスのDNA,RNAを認識するTLR3,7,9は腎臓糸球体の支持細胞であるメザンギウム細胞に多数発現している。感染後のウイルス血症の結果、この受容体にウイルスが直接的に作用し、シグナルを伝えることで、炎症性サイトカインの産生は高まり、糸球体に増殖性の変化が起こることは十分に考えられる。今回の研究では、腎臓糸球体の支持細胞であるメザンギウム細胞に多数発現しているToll like receptorに注目し、実際のIgAN組織内の発現を検討した。我々が今回の研究にて明らかに出来たことは、主に検診に於ける尿所見異常で発見され、腎生検にて診断が確定した患者の腎組織では、TLR9の発現が特異的に亢進し、その結果IFN-α、IL-6、TNF-αの産生が亢進しているということである。この結果は、早期のIgANでは獲得免疫に比して自然免疫優位の免疫反応下で病態形成が行われることを示唆している。今後は従来の予後を推定する根拠である病理分類とこれらのサイトカインの発現パターンを関連づけることで、病態形成へのサイトカインの関与が明らかにできると思われる。
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